人体の構造と機能
第1節:人体を構成する要素
学習の概要
このセクションでは、生命の基本単位である細胞から、組織、器官へと続く人体の階層的な構造と、体内の恒常性を維持する体液の役割について学びます。
要約
生命の最小単位である細胞の構造(細胞膜、核、細胞小器官)と機能から説き起こし、同じ機能を持つ細胞の集まりである組織(上皮組織、支持組織、筋組織、神経組織)について解説します。さらに、複数の組織が連携して特定の機能を担う器官へと話を進めます。また、体重の約60%を占める体液を細胞内液と細胞外液に分け、その組成や役割を説明。生命活動に不可欠な酸塩基平衡、浸透圧、そして体液調節のメカニズムについて詳しく掘り下げています。
達成目標
細胞の構造について説明できる。
細胞は、内外を隔てる細胞膜、遺伝情報を保持する核、そしてエネルギー産生や物質合成を行うミトコンドリアやリボソームなどの細胞小器官から構成されています。
細胞小器官の特徴と機能について説明できる。
- ミトコンドリア: エネルギー(ATP)産生の場。
- リボソーム: 蛋白質の合成。
- リソソーム: 不要物の分解・消化。
- 小胞体・ゴルジ装置: 蛋白質や脂質の加工・輸送。
人体を構成する4種類の組織とそれぞれの特徴と機能について説明できる。
- 上皮組織: 体の表面や体腔を覆う組織(皮膚、粘膜など)。
- 支持組織: 他の組織を結合し、体を支持・保護する組織(骨、軟骨、血液など)。
- 筋組織: 収縮により運動を生み出す組織(骨格筋、心筋、平滑筋)。
- 神経組織: 情報の伝達・処理を行う組織(神経細胞、神経膠細胞)。
器官系を列挙することができる。
消化系、循環系、呼吸系、泌尿系、生殖系、内分泌系、神経系、感覚系、筋・骨格系、皮膚系などがあります。
体液の内訳とそれぞれの機能について説明できる。
体液は体重の約60%を占め、細胞内にある細胞内液(約40%)と、細胞外にある細胞外液(約20%)に分けられます。細胞外液はさらに血液の液体成分である血漿と、組織の細胞間を満たす間質液に分かれます。これらは物質運搬や内部環境の維持に重要な役割を果たします。
酸塩基平衡の概念とそれを調節する仕組みについて説明できる。
体液の酸と塩基のバランスを指し、pHで示されます。生体は、血液の緩衝系、肺による二酸化炭素の排出、腎臓による酸の排泄と炭酸水素イオンの再吸収によって、pHを7.35~7.45の狭い範囲に厳密に調節しています。
浸透圧の概念および体液調節における意義について説明できる。
浸透圧は、半透膜を介して水が濃度の低い方から高い方へ移動する力です。体液では、細胞膜を隔てた細胞内外の水分移動に重要な役割を果たします。特に血漿中の蛋白質(主にアルブミン)によって生じる膠質浸透圧は、血管内に水分を保持するために不可欠です。
電解質と体液調節の仕組みについて説明できる。
体液量や電解質濃度、浸透圧は、自律神経系やホルモン(抗利尿ホルモンなど)、腎臓の機能によって調節されています。例えば、脱水で浸透圧が上昇すると、口渇を感じて飲水を促し、尿量を減らして体液の恒常性を維持しようとします。
基準値
成人の体液量
体重の約60%
(男性は約60%、女性は約55%)
動脈血の正常pH
7.35 – 7.45
復習問題
細胞内でエネルギー(ATP)を産生する主要な細胞小器官は何ですか?
答え: ミトコンドリア
体液のうち、最も量が多いのは細胞内液と細胞外液のどちらですか?
答え: 細胞内液(体液全体の約2/3を占める)
血液のpHが酸性に傾く状態を何と呼びますか? また、それを是正するために働く主要な器官を2つ挙げてください。
答え: 状態は「アシドーシス」。器官は「肺」と「腎臓」。