ECG MASTERCLASS

心臓のリズムを解き明かす、革新的学習ガイド

心電図とは? What is an ECG?

心電図(ECG)は、心臓が動く際に発生する微弱な電気信号を体の表面から記録し、波形としてグラフ化したものです。心臓の健康状態を評価するための、最も基本的かつ重要な非侵襲的検査であり、不整脈、心筋梗塞、心肥大など、多くの心疾患の診断に不可欠です。

波形の解読 Decoding the Waves






P
QRS
T

P波 心房の興奮

役割:心房の電気的興奮(収縮)を示す。洞結節から正常にリズムが始まっている証拠。

高さ: < 0.25mV (2.5mm)。これ以上は右房負荷を疑う。

幅: < 0.12秒 (3mm)。これ以上は左房負荷を疑う。

QRS波 心室の興奮

役割:心室の電気的興奮(収縮)を示す。心臓のポンプ機能の主役。

幅: 0.06 – 0.12秒 (3mm未満)。これ以上は脚ブロックなど伝導障害を疑う。

高さ:高電位は心肥大、低電位は心嚢液貯留などを示唆。

T波 心室の回復

役割:心室が興奮から回復(弛緩)する過程。心筋の健康状態を反映。

向き:通常QRSと同じ上向き。陰性T波は心筋虚血などを疑う。

高さ:高すぎるテント状T波は高カリウム血症のサイン。

基本の基準値 Quick Reference

心拍数

60-100回/分

PR間隔

0.12-0.20

(3-5マス)

QRS幅

< 0.12

(< 3マス)

QTc間隔

< 0.44

臨床ケーススタディ Clinical Cases

急性心筋梗塞 (ST上昇型)

“胸が締め付けられるように痛い”


ST上昇
ST上昇
ST上昇

所見:ST部分が基線から著しく上昇。これは心筋が壊死し始めている超緊急事態のサイン。

→ 直ちにカテーテル治療が必要!

心房細動 (Af)

“動悸がする、脈がバラバラ”


所見:P波が消失し、基線が不規則に揺れている (細動波)。R-R間隔も完全にバラバラ。

→ 脳梗塞の大きな原因となるため抗凝固療法などを検討。

学びの終わりに

心電図は臨床における最高のパートナーです。一枚の波形から得られる情報を最大限に活用し、日々の診療に役立ててください。このガイドが、その第一歩となれば幸いです。